ハプスブルグ家が支配したオーストリア帝国の都として栄えたこの街は、華やかでありながらどこか慎ましげな優雅さをまとっています。
美術品を展示するために生まれた建物
美術史美術館は1872年に時の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の命で建築が始まり、1991年に一般公開されました。
ウィーンの心臓部をぐるりと囲む大通り「リング」沿いにあり、多くの旅行者にとって旅の出発地点となるオペラ座からは歩いて10分もかかりません。
同時に設計された自然史博物館と向かい合う形で建てられています。
この美術館の最大の特徴は、最初から美術館のための施設として設計・装飾されていること。
ネオ・ルネサンス様式の建物をベースにそれぞれの部屋の展示物と見事に調和する内部装飾が施されています。
例えば、古代エジプトの出土品を集めた展示室。
新王国時代の遺跡からそのまま写し取ったというデザインで天井と側面が装飾されています。
さらにこの写真の中央に立つ2本の柱も同時代の遺跡から持ち出されたものを利用しているのだとか。
こだわり抜かれていますね。
見逃せないのは展示室だけではありません。
大広間の大階段を登ると現れる天井画と、隣接する側面上方の壁画にも注目です。
美術史美術館の名前の通り、美術史における各時代を代表するイメージや、代表的な画家のイメージで囲まれています。
特にグスタフ・クリムトによる壁画装飾は彼のキャリアの初期に描かれたものであるにもかかわらず、十分すぎるほどに異彩を放っています。
クリムトの手がけた部分。左側は古代ギリシア、右側はエジプトを表しています。
こんなに美しい空間で、きらめく芸術品と向き合うことができるのです!
展示物はハプスブルグ王家のコレクション
ヨーロッパ随一の名門皇家と呼ばれるハプスブルグ家の君主達によって代々収集されてきたコレクションがこの美術館の展示品。
先ほどもご紹介した古代エジプトやギリシア・ローマの遺跡からの出土品をはじめとしてイタリア・北方ルネッサンス、バロック、近代の絵画まで、幅広いジャンルにわたります。
見るべき作品が多すぎてとても皆は挙げきれないですが、個人的に印象に残ったものを何点かピックアップしてみますね。
ジャンボローニャのブロンズ像「メルクリウス」とアンドレア・デッラ・ロッビア工房の彩色陶板「アレクサンダー大王」
この美術館の至宝のひとつ、黄金の塩・胡椒入れ(左)と機械仕掛け人形(右上)、時計(右下)
ギリシア・ローマ時代の彫像やモザイク。
モザイク(左下)は19世紀にザルツブルクで発見されたローマ時代の床面装飾。ギリシア神話のテセウスの冒険が描かれています。右のブロンズ像はルネッサンス時代に作られた古代ローマ彫刻のコピー。
絵画の分野のみを取っても、世界有数の美術館の名にふさわしい充実度です。
イタリアルネッサンスの代表的な画家であるラファエロ、ティッツィアーノの絵画やこの美術館が世界最多の点数を保有するピーテル・ブリューゲルのコレクションが広々とした空間に展示されています。
ラファエロ「草原の聖母」
ジョヴァンニ・ベッリーニ「鏡の前の若い裸婦」
ティツィアーノ「暗殺者」
ティントレット「水浴びするスザンナ」
クラナハ「ユディト」
アルブレヒト・デューラー「聖三位一体」
カラヴァッジョ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」
パルミジャニーノ「凸面鏡の自画像」
ピーテル・ブリューゲル「バベルの塔」
フェルメール「絵画芸術」
他にもアルチンボルド、ルーベンス、レンブラント、それに私が行った時はたまたま閉鎖されていたベラスケスのマルガリータ王女の肖像も必見作品ですね。
…ベラスケス、見たかったです…!笑
開館情報
最新の情報はなるべくWebサイトなどでご確認ください。
開館情報
ウィーン美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)
- 住所 Maria-Theresien-Platz, 1010 Wien
- 定休 月曜
2019年6月~8月と、10月15日~2020年1月19日までは毎日開館 - 営業
火曜~日曜…10:00~18:00
木曜…10:00~21:00
(閉館30分前入場締切)
チケット価格
- 大人…16€
- ウィーンカード…15€
- 19歳以下の子供…無料
※ウィーンパスで無料入場可能
※オーディオガイド(日本語対応)は4€。
あまりに素敵な空間でオーディオガイドの説明もギッシリ用意されていたので、午前中から閉館間際まで入り浸っても足りないくらいでした。
大階段を昇ったところに美しいカフェがあり、お茶を飲む時間も含めてゆっくり過ごせたら最高だと思います。
cianaでした。