サンタ・マリア・ドンナレジーナ教会博物館-14世紀のフレスコ画とバロック絵画に注目[ナポリ]

サンタ・マリア・ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 ナポリの観光
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ナポリの旧市街を切り裂くように伸びるこの街で最も賑やかな通り、スパッカナポ

ピッツェリアや土産物屋を目当てに集まった観光客や、陽気な地元の住人が思い思いに楽しむ中、隙間を縫うように2人乗り、3人乗りのバイクが猛スピードで駆け抜けていきます。

そんな下町の喧騒から逃れるように少し北にそれて、狭く陽の当たらない路地を抜けると、サンタ・マリア・ドンナレジーナ教会博物館が姿を現します。

この2007年に整備された博物館では、サンタ・マリア・ドンナレジーナ・ヴェッキアサンタ・マリア・ドンナレジーナ・ヌォーヴァの隣接した2つの教会を見学することができます。

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2つのドンナレジーナ教会の歴史

サンタ・マリア・ドンナレジーナ教会博物館

既に780年には、この場所にサン・ピエトロ・デル・モンテ・ディ・ドンナレジーナと呼ばれる修道院が存在していたことがわかっています。

その後、9世紀以降には修道女が生活するための施設として、13世紀にはナポリ国王が政治犯を収容するための牢獄として、所有者を変えつつ受け継がれていました。

ところが1293年大きな地震が起こり、建物の大部分が破壊されてしまいます
この時に自身の宝飾品や、所有地で生産されたワインを売ったお金を寄付して教会を再建させたのが、アンジュー家カルロ2世の妻、ハンガリー王妃マリアでした。
1390年には落雷による火事が。15世紀には再びの地震が。
自然災害によりたびたび被害に見舞われながらも利用され続けていたこの教会も時代を経て手狭になったため、17世紀に隣接するサンタ・マリア・ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会が新たに建設されました。
ヴェッキアは「古い」、ヌォーヴァは「新しい」を意味するイタリア語の形容詞です。

それぞれの時代を反映してドンナレジーナ・ヴェッキア教会フランス風ゴシック様式で、ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会バロック様式で建てられています。

ドンナレジーナ教会博物館の順路は少し複雑。
ヴェッキア教会への入り口を見落とさないで!

見学コースでは、2つの隣接した教会とヌォーヴァ教会の2階のギャラリーをめぐります。
足元に描かれた矢印に沿って進めばいいのですが、2階に上がったり降りたりと少し複雑です。
私は当初、ヴェッキア教会への入口を見落として出口から出てしまいました。
(あれ?と思って係の方に案内してもらいました。)
ご注意くださいね!

見学の流れ

博物館入り口

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 1階・左側

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 2階ギャラリー

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会 1階

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会 2階

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 1階・右側

博物館出口

それでは、順路に沿ってご紹介します。

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 1階 大広間

サンタ・マリア・ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会

入り口でチケットを購入して、まずはドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会から見学します。

こちらは先ほどもご案内したように17世紀バロック建築で、ナポリ特有の黄金の漆喰で飾られた内部は明るく華やか。
流れているクラシック音楽が気分を盛り上げてくれます。

注目すべきは聖堂内陣上のフランチェスコ・ソリメナによるフレスコ画「サン・フランチェスコのバラの奇跡と、高名なバロック画家、ルカ・ジョルダーノによって主祭壇の上の円屋根に隣接した半円に描かれた聖人たちの絵画です。

矢印に沿って、入り口から見て左側の通路、正面、と見学したら次の部屋「コムニキオ広間」を通り、エレベーターで2階(イタリア式の1階)まで行きましょう。

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会 2階 ギャラリー

教会の2階をぐるりと囲むギャラリーでは、ドンナレジーナ新旧教会だけでなく、ナポリ中の宗教施設から集められた絵画や教会付属の宝飾品、聖遺物がテーマごとに展示されています。

ルーカ・ジョルダーノ「サン・アゴスティーノの幻視」ルーカ・ジョルダーノ「サン・アゴスティーノの幻視」

パオロ・ディ・マティス「聖イレーネに治療される聖セバスティアーノ」パオロ・ディ・マティス「聖イレーネに治療される聖セバスティアーノ」

アンドレア・バッカロ「ロザリオのマドンナと聖ドメニコとカテリーナ」アンドレア・バッカロ「ロザリオのマドンナと聖ドメニコとカテリーナ」

アニエッロ・ファルコーネ「エジプトへの逃亡」アニエッロ・ファルコーネ「エジプトへの逃亡」

広間の2階のバルコニーからは天井画をより近くで眺めることができます。

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会の天井画

エレベーターを降りたらヴェッキア教会へ

ヴェッキア教会への入り口

エレベーターを降りて左手に進むとお手洗とヴェッキア教会への案内があります。
地味な見た目をしているので気付きにくいのですが、お手洗いの間を通り抜けた先に、ヴェッキア教会へと続く道が見えてきます。

ヴェッキア教会への入口

最後もまたそっけない扉。
いよいよドンナレジーナ・ヴェッキア教会への入口です。

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会 1階

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会、ハンガリー王妃マリアの廟墓

倉庫のそれのような扉を開けると、突然この廟墓(写真左)と対面することになります。

歴史の箇所でもご説明した、この教会の再建に尽くしたハンガリー王妃マリアのため、1326年にシエナの彫刻家ティーノ・ディ・カマイーノガッラルド・プリマーリオの手により制作されました

ティーノ・ディ・カマイーノピサ大聖堂の説教壇を手がけた著名な彫刻家、ジョヴァンニ・ピサーノの弟子で、彼自身もシエナやフィレンツェで活躍しました。

教会の屋根はハンガリー王妃マリアとその夫カルロの紋章(写真右)で彩られています。

ロッフレード礼拝堂も見逃せません

廟墓と向かい合った場所に、2つの双子窓を持つこの教会唯一の礼拝堂、ロッフレード礼拝堂があり、14世紀前半ジョット派によって描かれたとされる貴重なフレスコ画を見ることができます。

ロッフレード礼拝堂、ドンナレジーナ・ヴェッキア教会

 

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会、2階への道

主祭壇の反対側にある扉から教会の外に出ると、すぐ左手に2階へと登る階段があります。

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会 2階

ドンナレジーナ・ヴェッキア教会、2階のフレスコ画

2階への階段を登ると先ほどの広間の真上ににある部屋に辿り着きます。
ここが「修道女たちの合唱隊席」と呼ばれる広間で、サン・ロレンツォ・マッジョーレ教会から移された寄木細工の合唱隊席で両脇を囲まれています。

壁面を飾るのはピエトロ・カヴァッリーニと弟子たちの手によるとされる「最後の審判」をはじめとした14世紀のフレスコ画です。
赤みがかっているのは雷が原因で起こった火災でフレスコ画が変色してしまったため。
それでもナポリにおける貴重なフレスコ画遺産のひとつとなっています。

ピエトロ・カヴァッリーニはローマで活躍した画家で、1308年ごろにナポリに滞在し、ハンガリー王妃マリアの夫であるカルロに仕えました。
サン・ドメニコ・マッジョーレ教会ブランカッチョ礼拝堂サンタ・チェチーリア・イン・トラステヴェレ教会最後の審判で知られています。

ドンナレジーナ・ヌォーヴァ教会に戻って、コース終了

ヴェッキア教会の見学を追えたら、来た道をヌォーヴァ教会まで戻って、エレベーターと反対方面に進み、小部屋を通って再び大広間に入ります。
今度は反対側の礼拝堂群を鑑賞して、コース終了です。

開館情報

最新の情報はなるべくWebサイトなどでご確認ください。

開館情報

サンタ・マリア・ドンナレジーナ教会博物館(Museo diocesano di Napoli)

  • 住所 Largo Donnaregina, 80138 Napoli
  • 電話 081 557 13 65
  • 定休 火曜
  • 営業
    月曜~土曜…9:30~16:30
    日曜…9:30~14:00

チケット価格

  • 大人…6€
  • 25歳以下の学生…4€

 

うーん、振り返ってみてもかなりのボリュームです。

地元の人はどなたもこの教会について知っていましたが、観光客にとってはメジャーな場所とは言えないようで、私以外には2組くらいしか見かけず、落ち着いていました。
ナポリという街の奥深さを改めて感じさせられます。

cianaでした。